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  東日本大震災により被災した民具をはじめとする文化財の保全措置について(要望)
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東日本大震災により被災した民具をはじめとする文化財の保全措置について(要望)

日本民具学会は、2011年9月20日に会長名で以下の要望書を文化庁へ提出致しました。
 
  
平成23年9月20日
 
 
 文化庁長官 近藤誠一 様
 
   日本民具学会 
  
会 長 佐 野 賢 治
 
 本年3月に発生した東日本大震災は、福島県での原子力発電所の原子炉崩壊も誘発し、広範囲に未曾有の災害をもたらしました。この大震災によって我が国のかけがえのない文化遺産である有形、無形の文化財が多大な被害を蒙りました。このような状況下、文化庁がいち早く文化財レスキューを立ち上げ、関係方面と連携をとって文化財の保全にあたったことは評価されます。
 しかし、年度末の限られた予算内での文化財レスキューであり、その対策は十分とはいえない状況です。文化庁のみならず、現在、国内の研究機関や大学、ボランティア組織が文化財の救出や修繕等にあたっていますが、現状での問題点は、第一に、被災した文化財の中で国指定物件については把握されていますが、県・市町村指定の文化財、地域組織や寺社、団体・個人等が所蔵する未指定の文化財は、被害状況の全体さえ確認されていません。とくに有形の民俗文化財である民具は、日常生活用具を多く含むため、被害状況の確認が困難を極めています。第二に、救出された文化財の修復や保全体制が十分ではなく、救出文化財の保管場所や修繕作業スペース、その人的措置など、多くの問題を抱えています。第三に、文化財の救出、修繕、保全作業は、短期間で行えるものではないにもかかわらず、長期的かつ計画的な対策が立てられていない状況にあります。第四に、被災地域の県、市町村における文化財保全への取り組みにばらつきがあり、ほとんど手つかずの県、市町村もあります。
 有形の民俗文化財である民具をはじめ、被災地域に受け継がれてきた有形・無形の文化財は、今後の復興において地域社会の活力の核となり得るものであり、日本民具学会としましては、以上の現状を鑑み右記の事項を要望します。
 一、 東日本大震災後に文化庁を中心に行われている文化財レスキュー体制の継続と予算の確保を、最低今後5年間は講じ、指定文化財ならびに未指定文化財の被災状況の把握とその修繕・保全対策を関係省庁と連携の上、実施して頂きたい。
 当該事項は、文部科学省・農林水産省・国土交通省が共管する「地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律」(2008年5月23日公布。通称「歴史まちづくり法」)の運用にも密接にかかわる、今後の地域社会の復興に重要な事項となりえます。 
 
 一、 国の主導のもと被災県・市町村の文化財主管部署に、文化財震災復興担当を置き、復興計画の策定と実施を早急に推進して頂きたい。県市町村の文化財震災復興担当の人件費については、国庫による特別措置をお願いしたい。  
 一、 日本民具学会をはじめ、地域の文化研究・文化財研究を進める学術団体ならびに大学等研究機関が被災地での文化財保全を行うための特別措置として、被災地文化財保全活動補助金を設け、市町村等の文化財震災復興担当と共同して作業に当たれる措置を平成24年度から講じて頂きたい。  
 一、 被災地域では、従来の文化財を保存していた施設が、甚大な被害を受け、使用不可能になっているところもあります。民具をはじめとする文化財を将来に受け継ぐためには、その保存施設が必要であり、復興事業の一つとして施設建設補助をお願いしたい。  
 一、 今後の自然災害等に備えるための措置を策定するために必要となる、東日本大震災文化財被災状況調査を早急に実施して頂きたい。

以 上  

 
 

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